平和祈念展示資料館科(総務省委託)
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企画展「おとうさんの絵本 "大連のうた"原画展」

企画展「おとうさんの絵本

この企画展では、海外からの引揚者である川崎忠昭さんがわが子におくった、『おとうさんの絵本 大連のうた』の原画を紹介しました。「おとうさんは中国で生まれたのに、どうして中国人じゃないの?」、わが子からの問いかけに向きあい描かれたこの絵本は、子どもの眼からみた、大連における日本人と中国人のくらしと、それが戦争によって壊されていく哀しみを映し出しています。


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さんざし売り

さんざし売り

いちどでいいから 食べたいなあ 宝石のようにきれいで おいしそうなものに ほんとうにバイキンが ついているのかなあ セキリ菌 チブス菌 コレラ菌 いちどでいいから 手に持ってみたいなあそして みんなが集まっている裏の広場に 走って行きたいなあ 中国の小孩児[ショーハイ]は いつもおいしそうに食べているのに 病気にならないし いいなあ―

さんざし売り
チェンピン<sup>※</sup>屋の陳おじさん

チェンピン屋の陳おじさん

チェンピンを買いにゆくとき 用心すること 友達のおかあさんにあわないようにたどりつくこと かまの上の大きな鉄板 油をすばやく塗り とうもろこしのどろどろを ぽとりと落とす あっという間に 紙のように うすく うすく キツネ色に焼き上げる 香ばしいチェンピン おかあさんはどうして食べてはいけないというのだろう ボクたちの秘密の隠れ場所 チェンピン屋の......陳おじさんの部屋
※中華クレープ。

チェンピン<sup>※</sup>屋の陳おじさん
けんかこおろぎ<sup>※</sup>

けんかこおろぎ

お互いに一匹ずつ袋から出しては かんの中の土俵に入れる 触角がふれるところまで近よると キバをむいてかみ合い 勝負が決まる 勝者は 羽をピンと上にはねあげ 威嚇するように足をふんばり リーリーとなく 最後に勝ち残った一匹が この日のチャンピオンで 新しい壺に入れて まっかなトンガラシの種を食べさせる さあ あしたは あの劉のと戦わせるぞ!
※コオロギ同士を闘わせて、虫王を決める昆虫相撲。

けんかこおろぎ<sup>※</sup>
秋の夜

秋の夜

南のひろしは二歳下だけど いつもボクにまとわりついている あの子も ボクと同じように親父がいないのだ 姉の和子ちゃんを見ると 胸がどきどきする こちらがどきどきしているのに 平気な顔で話しかけてくるけど 恥ずかしくないのかなあ 夜空には ことし三度めの雁のわたりを見た 来年は いよいよ中学進学の年だが 戦争は いったいいつまで続くのだろう

秋の夜
ロシヤ町

ロシヤ町

ロシヤの子供は そばかすだらけ でも ヤムスキーは ロシヤ町の番長だ 青い目玉に 鳥の巣赤毛 ヤムスキーは いいやつなのさ 菓子や映画もおごってくれるし キタイスカヤー(中国人街)のいじめっ子は 追っぱらうし それに それに 大事な新品のカスミ網もくれたんだ 前歯の大きなヤムスキー オーチン ハラショー オーチン ハラショー(とっても すばらしい)

ロシヤ町
アカシヤ並木

アカシヤ並木

ことしも 白い花の季節 アカシヤの季節がはじまった 甘い香りがあたり一面にただよう 一つのがくの部分をかむと 香りと甘さが鋭く口にひろがる もう一つ もう一つとつながって 白いアカシヤの 幻想の中にとけこんでゆく 両側からおおいかぶさるような 白いアカシヤの並木道 若いロシヤのアベックが 相乗りの自転車で 甘い香りを つき破るように走り下りてくる

アカシヤ並木
負けた日本兵

負けた日本兵

ザック ザック... 散り終わったアカシヤ並木を 軍靴の足音が近づく あっ 日本兵だ でも鉄砲ももってない よれよれの菜っ葉服で ロシヤ兵に追いたてられながら どこに行くのだろうか 学校で教えられた 世界一強い関東軍の兵隊 アカシヤ並木のかなたに消えていった カーキ色の群 あれから いったい どうなったのだろうか これから いったい どうなるのだろうか

負けた日本兵
交番と中国人の乞食

交番と中国人の乞食

日本人の家の軒下で ゴミ箱をあさり 残飯や廃品をひろう 中国人の乞食 ただ それだけで 日本人警官に ひたすらになぐられる とび散る鼻血 にぶい骨を打つ音 ただ蹴り なぐる 警官の口からはき出される罵倒と荒い呼吸 最後には 凍てついた路上に たたきつけられる それでも 無言のまま どこかへ消えてゆく あの中国人は ほんとに 悪いことをしたのだろうか

交番と中国人の乞食
客を待つヤンチョー<sup>※</sup>

客を待つヤンチョー

アカシヤの葉は すっかり色濃く 大きなかげりをひろげ 深海の底のような冷たさがただよう 夏の盛りの昼下がり アスファルトのはげた道路を吹きぬける風は ヤンチョーの昼寝の夢をさそう 同じ皮 膚の色をした金持ちの日本人 着物をきた ごうまんな日本人女 そんな客でも 来ればよい アカシヤの下で うつらうつらと客を待ち 誰も来ない日が続く 親切なヤンチョー 明日もいい客が見つかればいいのになー
※人力車をひく人。

客を待つヤンチョー<sup>※</sup>
中国人の略奪

中国人の略奪

まだ夏雲がのこっていたころ 日本の警察官の護衛する荷馬車におそいかかる もうれつな顔付きの中国人 これが あの二日前までアカシヤの木陰や橋の下で 働くことはすべて拒否したように寝ころがり 身じろぎもしなかった同じ中国人か 彼らが声を発するのは 目的の麻袋(こうりゃん)を肩にして 走り去る時だけ 破れた麻袋が路上に散り 乱闘の証となる 日本は負けたのだ

中国人の略奪
わるいロシヤ兵

わるいロシヤ兵

戦争に負けた 大連の町にも ロシヤ兵の姿 いま 戦場から着いたように油まみれの軍服 片手には 自動小銃をぶら下げ 片手の腕には 日本人から強奪した時計が おもちゃのように並ぶ 若い女とみると スカートに手をかけて みなの前で 何のためらいもなく めくりあげる 戦争に負けたのだ 学校で学んだあの強い日本軍は いったい どこに行ってしまったのだろう

わるいロシヤ兵
うんこ

うんこ

玉砂利の小さい弾をポケットいっぱい これだけあれば「むしくい」一羽はとれるはず レンギョウのやぶ 桃の木の林 低いあんずのブッシュ うあーっ 突然 よっちゃんの悲鳴 大きなロシヤ兵が 鉄砲片手で うんこ ぼたぼた あわてて逃げ出すやぶの外 いた 「むしくい」だ それっ 逃がすな パシーン 玉砂利の玉は小枝にはじける 「こっちへ来い!」 まっかな顔して お尻まる出し 鉄砲ふりあげ さっきのロシヤ兵 わーっ 逃げろ 「むしくい」どころか うんこ見物だ
※スズメ目ムシクイ科の鳥の総称。

うんこ
女ロシヤ兵

女ロシヤ兵

大きい おっぱい 大きな おしり 腕には 軽そうに自動小銃 服は男の兵隊と同じだが よごれていないなあ これでは 日本の男は負けるかな でも青い瞳は恐そうだが きれいだ 青い瞳の女ロシヤ兵 女の兵隊でも 戦争になると 鉄砲で 人間を殺すのだろうか 「ドラスチー!」(こんにちわ) 女ロシヤ兵は 大きな声で 明るく 叫んだ

女ロシヤ兵
まちかど

まちかど

赤い顔して きたない服の ロシヤ兵 通りかかった ボクたちに 大きな黒パン くれたっけ あとで みなで食べたら ぼろ ぼろ ぱさ ぱさ これじゃあ しなまちで買ったチェンピンの方が よっぽど おいしいや こんなまずいパン食べて どうして あんな良い声で 歌えるのだろうか バラライカでひくメロディは どこか悲しくなったっけ
※ギターに似たロシヤの楽器。

まちかど
立ち売り

立ち売り

美しく装うために求めたはずの衣類も いまはただ その日その日の 家族の胃袋をみたすだけの目的で ひっしに売られてゆく 「いくらだ」 言葉を知らぬ日本の女たちは 指でその値段を示す ニヤニヤ笑いの買い手は 顔を横にふる そして半分にならぬ数を 指であらわす あちこちで買いあさった 美しい衣類は 無残に 彼らの脂びかりした苦力服の脇に垂れさがり ふえてゆく

立ち売り
さよなら大連

さよなら大連

南山麓に日が沈む しなまちは いまが一番忙しい にんにくと にらと 油と 赤いとうがらしの匂いが 土塀をこえてしのびよってくる 雑踏の中に 不思議な明るさで通り過ぎる 細い白い姑娘 あれは白蛇の化身 ヤムスキーと初めてあったのも この外人町の裏山だった いまごろ 彼は ドスビダーニャ ダルニー ツァイチェン ツァイチェン さようなら 大連 再見 再見
※ロシヤ語と中国語で「さようなら 大連」という意味。

さよなら大連
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